あの夏が飽和する。- covered by 花譜 - 花譜

[00:12.57]「昨日人を殺したんだ」
[00:15.05]君はそう言っていた
[00:17.91]梅雨時ずぶ濡れのまんま
[00:19.90]部屋の前で泣いていた
[00:23.18]夏が始まったばかりというのに
[00:25.90]君はひどく震えていた
[00:28.30]そんな話で始まる
[00:30.55]あの夏の日の記憶だ
[00:52.72]「殺したのは隣の席の
[00:54.94]いつも虐めてくるアイツ
[00:57.46]もう嫌になって
[00:58.93]肩を突き飛ばして
[01:00.40]打ち所が悪かったんだ
[01:03.12]もうここには居られないと思うし
[01:05.85]どっか遠いとこで死んでくるよ」
[01:08.54]そんな君に僕は言った
[01:10.84]「それじゃ僕も連れてって」
[01:13.83]財布を持って　ナイフを持って
[01:16.56]携帯ゲームもカバンに詰めて
[01:19.21]いらないものは全部壊していこう
[01:24.59]あの写真も　あの日記も
[01:27.10]今となっちゃもういらないさ
[01:29.71]人殺しとダメ人間の
[01:33.53]君と僕の旅だ
[01:40.67]そして僕らは逃げ出した
[01:42.89]この狭い狭いこの世界から
[01:45.83]家族もクラスの奴らも何もかも
[01:48.62]全部捨てて君と二人で
[01:51.20]遠い遠い誰もいない場所で二人で死のうよ
[01:55.80]もうこの世界に価値などないよ
[01:58.48]人殺しなんてそこら中湧いてるじゃんか
[02:02.02]君は何も悪くないよ
[02:04.48]君は何も悪くないよ
[02:23.31]結局僕ら誰にも愛されたことなど無かったんだ
[02:27.91]そんな嫌な共通点で
[02:30.50]僕らは簡単に信じあってきた
[02:33.85]君の手を握った時
[02:35.84]微かな震えも既に無くなっていて
[02:39.18]誰にも縛られないで二人
[02:41.43]線路の上を歩いた
[02:44.54]金を盗んで　二人で逃げて
[02:47.28]どこにも行ける気がしたんだ
[02:49.85]今更怖いものは僕らにはなかったんだ
[02:55.20]額の汗も　落ちたメガネも
[02:57.85]「今となっちゃどうでもいいさ
[03:00.24]あぶれ者の小さな逃避行の旅だ」
[03:11.20]「いつか夢見た優しくて
[03:13.39]誰にも好かれる主人公なら
[03:16.49]汚くなった僕たちも見捨てずに
[03:19.34]ちゃんと救ってくれるのかな？」
[03:21.82]「そんな夢なら捨てたよ
[03:23.97]だって現実を見ろよ
[03:25.82]シアワセの四文字なんてなかった
[03:29.31]今までの人生で思い知ったじゃないか
[03:32.54]自分は何も悪くねえと
[03:35.14]誰もがきっと思ってる」
[03:53.80]あても無く彷徨う蝉の群れに
[03:56.50]水も無くなり揺れ出す視界に
[03:59.18]迫り狂う鬼たちの怒号に
[04:01.77]バカみたいにはしゃぎあい
[04:03.57]ふと君はナイフをとった
[04:05.82]「君が今までそばにいたから
[04:08.35]ここまでこれたんだ
[04:10.12]だからもういいよ
[04:11.62]もういいよ
[04:12.59]死ぬのは私一人でいいよ」
[04:24.73]そして君は首を切った
[04:26.92]まるで何かの映画のワンシーンだ
[04:29.97]白昼夢を見ている気がした
[04:32.56]気づけば僕は捕まって
[04:35.10]君がどこにも見つからなくって
[04:37.89]君だけがどこにもいなくって
[04:40.62]そして時は過ぎていった
[04:42.89]ただ暑い暑い日が過ぎてった
[04:45.76]家族もクラスの奴らもいるのに
[04:48.46]なぜか君だけはどこにもいない
[04:51.20]あの夏の日を思い出す
[04:53.50]僕は今も今でも歌ってる
[04:56.49]君をずっと探しているんだ
[04:59.15]君に言いたいことがあるんだ
[05:01.81]九月の終わりにくしゃみして
[05:04.28]六月の匂いを繰り返す
[05:06.92]君の笑顔は
[05:08.41]君の無邪気さは
[05:09.88]頭の中を飽和している
[05:12.52]誰も何も悪くないよ
[05:15.07]君は何も悪くはないから
[05:17.84]もういいよ
[05:18.95]投げ出してしまおう
[05:20.53]そう言って欲しかったのだろう　なあ？